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21g  2004/06/13

今週のおすすめの1本は、誰もが必ず失う重さ、「21g」

人は死んだ時に21gだけ軽くなる。チョコレートバーの重さと同んなじ、21gって、魂の重さなの? 生きてる証の重さなの?

全く別の世界に生きていた1人の女と2人の男の運命を引き寄せたのは、ひとつの心臓だった。余命1ヵ月と宣告されて、心臓移植以外に助かる道のないポール。優しい夫と2人の幼い娘と幸せに暮らしているクリスティーナ。信仰に没頭することで、心の平静を得ようとする前科者のジャック。ある事故がきっかけで、3人の運命は出会い、重なり、よじれ、予想もしなかった結末へとたどり着くのです。

3人を演じるのは、「ミスティックリバー」でアカデミー主演男優賞をとった、ショーン・ペン、「リング」やデビッドリンチ監督の「マルホランド・ドライブ」のナオミ・ワッツ、「トラフィック」「スナッチ」のべニチオ・デル・トロの役者それぞれが、全身全霊で演じています。もうこれだけで見に行く価値あり!の豪華な競演なんですね。実はこの作品、お話の時系列がメチャメチャなんです。だから見ている人たちは最初混乱するかもしれないんですけど、それがまた彼らの精神状態を反映していて、深みにつながっています。撮影も手持ちカメラを多く使用し、役者の目の輝きひとつひとつが、リアルに迫っていきます。そういった意味でも、見ている観客は息抜きする間もないほど、物語に引きずりこまれていきます。監督は、ハリウッドが今、注目している新世代の監督の1人、メキシコのアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ。彼が、この作品で描きたかったことは、矛盾と間違いだらけの多面性を持つ人間。どんな人でも、善人、悪人と単純に振り分けることはできないから、人を裁くことなく、人の弱さも強さも見せたかった。なぜなら、人間という存在の真実を明らかにするには、それしか方法がないからだ、と言っています。そうですね、私もこの矛盾だらけの人間の1人です。言ってることとやることが全然違ってたり、頭の中で考えていることと、実行が伴っていない。意図していない行動、発言が時として相手を傷つけ、悲しませることもあります。でもその中で、なんとか折り合いをつけて、自分らしく生きていこうと思っています。

前向きに生きる希望は、ほんの些細なきっかけから生まれるかもしれない、とこの映画は言っているのかも知れません。考えすぎると辛くなっちゃうけど、生きている証、・・・あなたの21gを確かめてみては、いかがですか?
by kanyukumari | 2004-08-02 22:27 | J-Cinema 04
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