Lost in Translation 2004/05/23
Jumble Cinemaがお届けする今週見るならこの1本は、Tokyoを舞台にした二人のふれあい物語、ソフィア・コッポラ監督の「ロスト・イン・トランスレーション」
ハリウッドスター、ボブ・ハリスは、サントリー・ウィスキーのCM撮影のために来日。ネオン輝く東京の街並みを眺めながら、宿泊先のホテルへ向っている。ホテル先では、エージェンシーやCM撮影スタッフが出迎えているが、早々に挨拶を切り上げ、丁寧な挨拶をするホテルのスタッフたちを通り抜け、1人隔離されたような無音の空間の部屋で腰を下ろす。冴えない、疲れた表情のボブ。途端に、アメリカの妻から、息子の誕生日に不在であることを責めるFAXが届く。さらに気が落ち込むボブ。17時間の時差ボケもあり、なかなか眠ることが出来ない彼。 フォトグラファーの夫に同行して東京にやってきた、シャーロット。大学卒業と同時に結婚、2年も経っていない若妻である彼女。夫は日本のミュージシャンのプロモーションビデオの撮影で、短い滞在期間での過酷なスケジュールでの仕事に追われ、彼女はほとんど1人で放っておかれていた。仕事に疲れて熟睡する夫の横で、彼女も眠れぬ夜を過ごしていた。 ボブとシャーロットは、ホテルのバーで何回かお互いを見かけ、声をかけはじめる・・・なぜ東京に?・・・・・・CM料200万ドルが欲しいからさ。とボブ。 ヒマだから夫についてきたの・・とシャーロット。 積極的に自分のことを話す性格の二人ではないのだが、何回か会って話していくうちに、お互いの心の隙間や悩みを打ち明けるようになっていく。そして、シャーロットは自分の日本の友人たちとのパーティにボブを誘う。ネオンと喧騒が引きめくTOKYOで、カタコトの英語を話す日本の若者たちとクラブにカラオケに・・と羽目をはずして遊ぶボブとシャーロット。遊びつかれた二人はやっと東京でぐっすり眠ることができるのであった・・。 この映画は、舞台が東京、ということもあって、公開前からずいぶん話題になっていた作品です。監督のソフィア・コッポラは、あのフランシス・フォード・コッポラ監督の娘であります。ソフィアが何日か日本に滞在したときに見たこと、感じたこと、がこの作品の中にいっぱい組み込まれています。私たちが普段生活している東京の風景、ビガビガのネオン、蠢く人ごみ・・などを、外国人の目を通して見ることが出来ます。複線として、ボブのCM撮影に関するサブ・ストーリーがあるのですが、エージェンシーや日本人スタッフ、通訳との意思疎通、考え方の違いに苦労するところなど、苦笑いできるところもあります。 しかし、メインストーリーは、異国の都会で不安と孤独を感じる二人が、出会い、心のままに、自然に打ち解けていき、忘れられない時間を過ごしていくところにあります。ボブ役の、ボブ・マーレーが、時にはシニカルに、時にはコミカルに、シャーロット役のスカーレット・ヨハンソンは、日本の女子大生のような感じで、初々しく、とっても二人とも良かったです。 さて、この映画ではボブが奥さんとの関係に悩んでいるときに出てきた、セリフのひとつに、「Mid-Life Crisis」(中年の危機)というワードがあるんですけど。ここ、最近のアメリカ映画でよく出てくるワードなんですよ。「恋愛適齢期」「ハリウッド的殺人事件」などでもでてきてましたね~。この「Mid-Life Crisis」とは、中年になって精神的にも肉体的にも衰えを感じた時に起きる症状のことを言って、「アメリカでは4人に1人がこの危機に直面しているそうです。上手に熟年になりきれないケースに男女差はなく、対応を間違えると積み上げてきた人生を失うことにもなりかねない」状況に陥っている、らしいのです。自分の中では、いつまでも若くありたいという願望があって、でも現実との落差を解消できず、どうしていいか分からなくなって、毎日の生活に混乱を来たしたり、自分を見失ったりします。自分の人生が、なぜだかつまらないものに思えてきて、「このままでいいのか?」と焦ったり、毎日憂鬱になったりします。女性は、シミやシワ、白髪など外観を気にするようになり、成形外科や皮膚科に通い始める傾向にあり、男性では、若い女性との浮気に走ったり、逆に肉体的・精神的ストレスからED(勃起不全)の症状を起す人、さらに最近は、男性の更年期障害が取り上げられていますが、これらも「Mid-Life Crisis」の症状の一つといわれているそうです。とにかく、これは、いずれやってくる老いを、なんとか忘れたい、避けたいというあせりや逃避から生じる行動・・ということで、誰にでもやってくるとはいえ、「老い」を受け入れる心のゆとりを持つには時間がかかる・・ということなんでしょうね・・。 まぁ、中年の方も、もちろん若い人にも、心の隙間を埋めてくれる「ロスト・イン・トランスレーション」は、ただ今、上映中です。
by kanyukumari
| 2004-08-02 22:15
| J-Cinema 04
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