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イン・アメリカ-3つの小さな願い事 2004/01/18

映画の話の前に、今日はこんな話から始めてみます。
それは今から約20年前、3人姉妹の長女は学校のプログラムに組み込まれていた、半年間のアメリカ留学を控えていました。その頃、彼女の父親は自分がやっていた事業の業績が悪くなる一方で蓄えも底をついていました。そんなときにやってきた娘の留学話。しかし留学を前提にその学校に入学した娘に、今更諦めてくれとは言えない両親は、結局娘に本心を告げずに、なんとか工面し、渡米させます。何も知らない長女は、のびのびとアメリカンライフをエンジョイし、留学中に迎えた父親の誕生日に彼女は1枚のカードを贈ります。そのカードは、亀が山を登っている絵で、確か文章は「あなたは既に人生のゴールに到着していると思っているのかもしれないけれど、実際はまだ中腹に過ぎないのですよ」といった内容で、特別な思いはなかったにせよ、父親に頑張って欲しいというメッセージを贈ったのでした。でも、この文章を読んで、父親は今の事業への踏ん切りをつけ、とにかく家族5人の生活を安定させるために、タクシーの仕事を始めたのです。そして半年の留学が終わって長女が帰ってくる日、両親は車で成田まで迎えに出ましたが、途中の高速で車が故障してしまいます。そんなこととは知らない長女は空港で両親が来るのを半ばイライラしながら待っていました。こんなときに遅れるなんて、と呆れていたそのときに、慌てて駆けつけた両親を見て、長女は愕然とし言葉が出ませんでした。遅れてごめんね、と必死に謝る母親は半年前に比べ体が一回り以上も小さくなり、5歳以上も老けて見えました。一体、自分がいない、この半年の間に家族に何が起こったのか? 長女が自分自身が原因だったのを解るのは、だいぶ後になってからのこと。後になって、留学も無理して行かせてもらったこと、自分が贈ったカードを読んで父親が転職を決心したことを知るのです。

「イン・アメリカ」は忘れられない辛い傷を持つサリヴァン一家が、アイルランドからNYへ移り住むところから始まります。大人の半島「マンハッタン」で、一家がようやく見つけたアパートは、ジャンキーたちの巣窟、「叫ぶ家」と呼ばれているところ。売れない役者の父親はTVの仕事を求めてアメリカにやってきたのだが、末息子のフランキーを亡くした悲しみから立ち直ることができず、役にも精彩を欠いています。母親は息子を死に追いやった自分や夫を許せないでいます。
サリヴァン一家には亡くした息子のほかに、クリスティとアリエルという娘たちがいます。愛くるしく、元気イッパイの彼女たちですが、弟を亡くして以来ビデオカメラに没頭する長女クリスティに、パパもママもお姉ちゃんも変わってしまって寂しい思いを小さいながらに堪えている次女のアリエル。クリスティは家族が幸せになるため弟フランキーに3つのお願いをします。そして、家族は様々な奇跡を体験し、苦境を乗り越えていくのです。

この映画は悲しい過去があるものの、家族がその苦しみと貧しさを乗り越えていく、愛情あふれる奇跡の物語です。奇跡があるかないかは別として、どの家族にもある物語とも言えます。熱波の続く夏のNYのボロアパートで、脱水症状を起こしそうな娘たちを見て、父親はボロボロのエアコンを調達し、アパートの最上階まで担ぎ上げていくんですが、その姿を見て、私は自分の父親を思い、先ほどの前段の話はもちろん私の話なんですけど、今を持って見ても私は両親の愛情をたっぷりもらって育ったんだなと、改めて感謝の気持ちでイッパイになったわけなのです。ぜひ、「インアメリカ」を見て、あなたの家族の物語を思い返してほしいです。そして思い出したことや、映画の感想を、Jumble Cinema宛にお送りください。あて先はいつものFAX番号、04-2966-4500 メールアドレス fmchappy@pdx.ne.jp
GGJC、Jumble Cinema宛てまで。最後にもう一言。クリスティとアリエルを演じるのが、実際にも姉妹である、サラとエマのボイジャー姉妹。もうこの二人は最高!是非出会って欲しいです。
by kanyukumari | 2004-07-21 18:15 | J-Cinema 04
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