J.Cinema 『かもめ食堂』

今週は、都内で、じんわりとロングラン上映している映画をご紹介します。

かもめ食堂」は、原作も監督も主演もすべて女性、という映画です。原作は、何気ない日常を鋭い観察力で描くエッセイで幅広い女性に支持されている、群ようこ。監督は、長編デビュー作品「バーバー吉野」でベルリン国際映画祭特別賞を受賞し、注目されている女性監督の荻上直子。
そして、小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ、といった3人の実力派女優が、普通の生活の中にある、幸せを、私たちに教えてくれます。





もともとは、「フィンランド・食堂・女性」という設定が最初の企画にあって、そこから原作ができているとおり、なぜかフィンランドのヘルシンキにある日本式の食堂を舞台に、3人の日本人女性の暮らしを描いています。小林聡美演じる主人公のサチエは、「ここなら私にもできるかな」って思って、ヘルシンキで「かもめ食堂」を開きます。日本の食堂なので、メニューは、焼き鮭定食や、豚のしょうが焼き、トンカツ定食、そして看板メニューは「おにぎり」。日本人観光客を相手にしているわけではなく、ひっそりと街の片隅にある「かもめ食堂」はオープンしても、街の人たちに相手にされず、日本おたくのフィンランド人の青年がコーヒーを飲みに来るくらいの、暇な食堂だった。そんな折り、2人の日本人女性が次々と「かもめ食堂」にやってくる。目的も滞在理由も詳しくは語られないのだが、3人とも、何か「肩の荷物」を降ろしてきた、過去を断ち切ってきた女性たち。そんな彼女たちが、異国で出会い、おいしい食べ物や仲間を通して新しい自分や目的を見つけていきます。

この映画で描かれているのは、毎日の普通の生活です。でも、その普通の生活の中にこそある、人に対する思いやりの気持ちや、おいしいご飯のありがたさが全編に渡って出ています。特別なものなんて何もありません。心をこめていれてもらうコーヒーの美味しさ、人に握ってもらう、おにぎりの美味しさ。気がつくと忘れていたような暖かい美味しさが、映画を見ているだけで味わえてくるからなんとも不思議です。フィンランド、という場所柄、アクセクしない、身の丈感覚が、時間の流れをゆるやかにしていて、とてもゆったりとした気持ちのいい空間をつくっています。さらに、3人の役者の個性が本当にイキイキと出ていて、セリフも、のんびりとした間も、全てが調和されているんですね。見ている観客もその、調和されたのんびりとした空間に身をおくことができます。ホント、なんとも気持ちがいい映画です。

最近、世の中のことをいろいろ発信している映画が多い中、今回のように直接説明しなくても、改めて、当たり前の生活に感謝する気持ち、自分の生活スタイルで出来ることの素晴らしさに気づかせてもらいました。LOHASなんて言いながら、地球のこと、世界のこと、自分が住んでいる社会のこと、自分の暮らしのことを良くしたくて自分なりに取り組んでいるけど、その想いを人に伝える、理解させるのではなく、私と接することで、自らで気づき、自発的に考えてもらう・・・、この映画で言えば「マサコさん」みたいに、画面に出ているだけで存在感がある、そんな触媒みたいな人になりたいなぁ、と、思った次第です。はい。

かもめ食堂」は、現在、シネスイッチ銀座、恵比寿ガーデンシネマ、新宿文化シネマ、シネ・リーブル池袋、他、都内で拡大公開しています。

この映画を見たら、美味しいご飯、食べたくなりますよ。
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by kanyukumari | 2006-05-02 17:03 | J-Cinema 06
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