Jumble Cinema 『ミュンヘン』

今週ご紹介するのは、スピルバーグ監督の「ミュンヘン」です。
「シンドラーのリスト」「プライベート・ライアン」に続く、歴史の裏に隠された事実をモチーフに描く、スピルバーグ執念の「自分のために作った」作品である、ミュンヘン。




1972年のミュンヘンオリンピックで11人のアスリート達が殺害された。全世界9億人の視聴者の前で展開された悲惨な暴力事件には、その後知られていない後日談がありました。
選手たちを殺害され、悲しみに暮れるイスラエル政府が下した決断は「報復」だったのです。

この映画は、この「報復」を任命された男たちが、愛国心のみで指示を受けるがまま任務を遂行し、"殺る、殺やれる”という見えない恐怖で神経が病み、正気と狂気の狭間で戦っていく様を描く、人間ドラマです。

「テロ」は今も昔も世界規模の大きな事件に発展するものだけど、日本人が「テロ」に対する恐怖を感じるようになったのは、オウム事件や9.11以降のことじゃないでしょうか?
特に70年代の日本にとっての中東アラブ問題って、オイルショックでトイレットペーパーの買い溜めで大騒ぎしたことくらいで、実際、この映画の全貌を理解するのは、アラブ問題やユダヤという民族・宗教問題などが絡んでいて、日本人には難しいんじゃないかと思います。
このような映画を作るのは、スピルバーグがユダヤ人であるから、であり、そして彼は、ユダヤ人のために映画を作れるだけのキャリアを持っているからなんですよね。

だから何が言いたいのか、って言うと、ユダヤとか、アラブ問題をちゃんと知らないもんだから、この映画の前半は、話についていくだけで結構大変なんです。でも、この映画はただ隠された事件を暴くのが目的ではなく、その事件を遂行してきた「人間たち」にフォーカスしてくるので、後半はすんなりと理解出来てきます。脚本の力かもしれませんね。

「報復」の任務を遂行してきた主人公の苦しみをたっぷり3時間見せられ、私が思ったことは、どんな些細なことであっても、「意味を考えないで行動してはいけない」「無関心ではいけない」という事です。今の世の中、簡便性が大事にされ、人々はあまり深く考えなくても短時間で何でも出来るし、毎日の生活に困ることがなくなりました。そのうち深く考えることのほうが少なくなり、自分の意志がない=世の中の流れに沿っている風潮になっています。

この映画の主人公は、「なぜ報復しなければならないのか?」を考えなかった、考えることを拒否し続け、結果、長年にわたり蓄積された「なぜ?」が恐怖という形になって彼に襲います。

そう、考えなかった行動には、後から代償がついてくるんです。

そう思うと、私たちも、考えないで行動したり、知らないままで済ませていたら、後で代償がくるかもしれません。環境問題にしても、世界の貧困にしても、もう既に代償が来てると言ってもいいかもしれませんよね。ミュンヘンを見て、「考えない」でいることの恐ろしさを改めて実感しました。


アカデミー賞主要5部門にノミネート!!『ミュンヘン』公式HPは、こちら。
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by kanyukumari | 2006-02-27 02:55 | J-Cinema 06
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