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ミリオンダラー・ベイビー

今週、ご紹介する作品は、アカデミー賞で、主演女優、助演男優、監督、作品賞の主要4部門を制覇した、クリント・イーストウッド監督の最新作。「ミリオンダラー・ベイビー」です。
ボクシングに希望を見い出そうとする女性と、そのトレーナーの心の葛藤(かっとう)を丹念に描いたヒューマン・ドラマ・・・・、そう、この作品はボクシングの映画ではなく、夢と希望を持つ女と、重い過去の償いを求める男との“人と人”とのラブ・ストーリーです。血縁関係、本物の親子以上の父と娘のような強い絆で結ばれていく二人を私たちは見守っていくことになります。



物語のあらすじを語ってしまうと、もったいないので、省くことにしますが、この作品のポイントは、「映画的」ではない、ということ。映像的な迫力がないのか、とか、そういうことではなく、ボクシングシーンが多いですから、迫力はもちろんちゃんとあります。でも、映画的な、奇想天外な、というか、展開や仕掛け、複線、みたいなものがないんです。ある一定期間の物語が静かに流れていく・・・、といった感じでしょうか。

そして、もうひとつのポイントが、無駄がない、ということ。メインとなる登場人物は3人で、その3人がつくっていく物語一つ一つが、多くは語っていないんだけど、それぞれが丁寧に扱われていて、それが、洗練された大人の物語感をつくっています。それが、この映画の宣伝文句に使われている「上質なドラマ」と言われているところかもしれません。

物語が静かに流れていく・・という感覚は、私は前作の「ミスティック・リバー」を観た時にも感じたことなので、この感覚はクリント・イーストウッド監督作品ならでは、のものなのかもしれないのですが、「ミスティック・リバー」がちょっと地味・・・という印象を受けるのを考えると、今回の「ミリオンダラー・ベイビー」の方が、より効果的な結果を生んでいると思います。

主人公の、年老いた名トレーナーでもあり重い過去を持つ「フランク」役には監督でもあるクリント・イーストウッド。
ボクシングに情熱をかける女性「マギー」役に、ヒラリー・スワンク。このヒラリーですが、31歳にして、アカデミー主演女優賞を2度獲得しています。「ボーイズ・ドント・クライ」という作品で、性同一性障害に悩むヒロインを熱演し、アカデミー、ゴールデングローブ賞など、数々の主演女優賞を総ナメした、実力派の女優さんです。この「ボーイズ・ドント・クライ」も衝撃的な作品ですので、機会があればぜひ見ていただきたい作品です。
そして脇を締めるのが、ボクシング・ジムで働く「スクラップ」役のモーガン・フリーマン。この作品でアカデミー助演男優賞を獲得しました。モーガン・フリーマンといえば、「ショーシャンクの空に」を思い出す方もいらっしゃると思いますが、今回のミリオンダラー・ベイビーでも、ショーシャンク同等、ドラマの語り部を務めています。彼の味わいある声、語り、佇まいは、作品に本物感を与えていると思います。

と、この名優3人が綴る物語・・・・先ほど、冒頭で私は「ラブ・ストーリー」と言いましたが、この作品は人間の尊厳にも関わる、とても重いテーマを持っています。見終わった瞬間もだけど、日が経つにつれて、いろいろと考えさせてくれる作品です。映画館で、じっくりと見てはいかがでしょうか?この作品を観て感じたことなど、メール・FAXなどいただけると嬉しいです。
by kanyukumari | 2005-06-08 01:42 | J-Cinema 05
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